グラッシィ博物館は楽器博物館・
工芸美術館・文化人類学(民族学)博物館からなる複合施設で、建物自体が数少ないワイマール共和国時代のアール・デコ様式博物館建築としての希少価値を有します。内部のライプツィヒ大学附属楽器博物館は、ドイツ最大・ヨーロッパ第2の規模を誇る世界でも有数の音楽文化コレクションです。ここにはヨーロッパのものを中心とした16世紀から現代までの楽器約5,000点が収蔵されており、楽器の進化から音楽史を追ってゆく「完璧なる響きを求めて」という常設展が眼と耳を同時に楽しませてくれます。1929年にグラッシィ博物館の楽器部門となった当館の歴史は、1886年にオランダ人出版者パウル・デ・ヴィットが自ら演奏を聴かせるための古楽器館を開設したことに始まりました。現在では見学者自らがいくつかの楽器に自由に触れ、実際に演奏することができます。
所蔵品の中でも特に重要なものはドメニクス・ピサウレンシスが1542年に製作したクラヴィコード、そしてピアノを発明したバルトロメオ・クリストフォリが1726年に製作したピアノで、前者は現存世界最古にあたり、後者は世界で3台しか現存しないうちの原形のまま残された1台という大変貴重なものです。クリストフォリ製作が証明されている鍵盤楽器は世界に9台残るのみといわれ、そのうち5台が当館所有であることも特筆に価します。また巨匠ジルバーマンとその弟子ヒルデブラント製作のパイプオルガンは定期的にその音色が披露され、1929年製造の大掛かりなシアターオルガンも修復を終えて60年ぶりに館内ホールへと戻ってきました。その他、コレクションの中にはアジア・アフリカ・アメリカの珍しい楽器約300点も揃います。
博物館の中庭を進んだ奥には、かつて市の中央墓地であった旧ヨハニス墓地(Alter Johannisfriedhof)が広がります。古代遺跡のような雰囲気を持つ緑濃いその敷地には、ライプツィヒ出身の作曲家リヒャルト・ワーグナーの母ヨハンナ(1778~1848)と姉ロザリー(1803~1837)、彼の師事したトーマス教会音楽監督テオドール・ヴァインリヒ(1780~1842)らの墓碑があり、見学することができます。